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いっぱいのお客さん、イパネマ、マシュケナダ

今年はライブの数を減らそう、と年の始めに決めて、そのとおり、月に「多くて二回」のペースでやってきている。なぜ、減らそうと思ったか?それは昨年お客さんが少なくなってしまったことが一番だが、次のアルバム制作などの活動のために時間とエネルギーを確保しようという狙いもあった。

さて、ライブの回数を減らして、果たしてお客さんは増えたか?答えは否。ひとつは震災の影響もある。確かに、夜の電車は震災以前にくらべて、ずいぶんすいている。余震がおさまってきたとはいえ、僕らの気持ちのどこかに、「備えて」いるものがあるのだろう。危うきには近寄らず、だ。会社が終われば、なるべく早く帰宅して家族とともに過ごそうと思うのはいたしかたない。しかし、僕のお客さんが少なくなったのは、それ以外に、僕自身に起因するところもあるはずだ。

僕はブラジル音楽専門家。多くの日本人に理解できない言葉で歌い、また日本人の体の中にないリズムで演奏していることが、この日本での僕の強みであると同時に弱みでもある。今現在は、後者「弱み」が勝っている、というわけだろう。

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photo by Mitsuo Machida

さて、そんな中、先週土曜日、イギリス人のダレン・カウルベック氏の企画によるボサノヴァ&ディナーのイベントで演奏してきた。ダレン氏の宣伝のおかげで超満員! 九段下にある小じんまりとしたフレンチ・レストランだが、お客さんであふれかえって、なんだか久々に味わう雰囲気であった。僕はその熱気から力をもらい、思い切り1時間演奏することができた。そして曲は、今までなら決して進んでは歌わなかったような「イパネマの娘」「マシュケナダ」まで、「楽しく」演奏して差し上げた。このライブはたいへん喜んでいただけたと思う。
それにしても、お客さんがいっぱいいるとうのは、いいもんだなあ。聴く側というのは、ぜいたくなもので、僕などもガラガラの客席にどっかと座って、目の前の美しい音楽を独占しているような気持ちで聞くのが好きだったりするのだが、演奏する方は、そりゃあ、お客さんが多い方がいいに決まってる。単純に、「張り合い」が出る。
そしてよく知られた曲、人気曲を演奏することのだいじさも、最近痛感している。リオにいたころ、日本に働きに行きたいというブラジル人音楽家に、僕は決まって「日本に行ったらね、『イパネマの娘』を、毎晩弾き続けなきゃいけないんだよ」とおおげさに忠告したものだが。そこには僕はごめんだよという気持ちがあったに違いない。しかし今の僕は、「イパネマの娘」でも「サマーサンバ」でも「おいしい水」でも、なんでも楽しくできるようになってしまった。もちろん、それは現在はそうだ、ということで、来年どうなるかは実際わからないが、少なくとも演奏家としての僕の心境に何らかの変化が起きていることは確かだ。おまけに、昔は客席からリクエストがあっても「僕の芸風とは違うんで、勘弁してください」と言って「苦々しい」顔で断っていた「マシュケナダ」が、楽しい。楽しいだけでなく、評判も良い。つまり「食わず嫌い」だったというわけだが、自身の変化と成長のせいもあるのだろう。

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photo by Mitsuo Machida

いっぱいのお客さんと、イパネマ、マシュケナダ...
実はこれを、今月末にもう一度経験できるかも知れないのだ。
来たる8月28日(日)17時より、川口リリアの音楽ホールにて、僕の自慢のトリオ、"臼田道成&Argonautas"によるコンサートが行われる。600人収容の、僕にとっては十分大きな会場だが、先月始めの時点ですでに半分を越えるチケットが売れたということだから、ずいぶんとお客さんが来てくれることはすでにわかっている。ありがたいことだ。そして僕ら、いつもマニアック(日本の一般の人にとって)な曲ばかり演奏してきたこのトリオが、なんと「イパネマの娘」「マシュケナダ」「サマーサンバ」「ビリンバウ」、さらに、えーい、もってけ泥棒、とばかりに「Wave」「コルコバード」「カーニバルの朝」まで、やってしまうのだ。もちろん、僕らが僕らであることを証明するために、「魚達の奇跡」「歌と瞬間」などの日本では滅多に聞くことのできないものも交えて。別に力こぶ入れて準備しているわけではないが、このコンサートが今年僕にとって一番大きな、というか華やかなイベントになるのは間違いない。
自主的に企画して行うライブでは、どうしても知り合いのお客さん中心になってしまうが、今回のコンサートではほとんどが未知の聴衆であることも、楽しみだ。新たな出会いが、きっとあるだろう。根気よく27年間鍛え上げてきた僕のボサノヴァの技術と思いを、未知の人々に知ってもらえる好機。それを楽しもう。まだコンサートまでは時間がある。しっかり練習して、より楽しめるようにしておこう。

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[C160] メジャーな曲

先月のブラッサオンゼのライブ、いつもと違うメジャーな曲が聴けて、(逆に?)新鮮でした。
川口リリアで、新たなファンを、たくさん獲得してください!
  • 2011-08-05 14:34
  • rikorisu
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[C162] 新たなファン

そうですね、獲得したいですねえ。
そろそろ状況を打開しないと・・とプロデューサー臼田は思っています。演奏家臼田はけっこうのんきですが。
  • 2011-08-05 17:29
  • 臼田道成
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[C163] リリアのコンサート

初めまして。 8月28川口リリアでのコンサートを聴かせて頂きました。 その感想をつたないブログですが書かせて頂きました。良かったらお読み下さいますと幸いです。 日頃からクラシック以外の音楽にもとても興味があり出来るだけライブには行く様にしております。 トリオの演奏はとても羨ましい演奏でした。 あんなに自由にあんなにストレートに自分の思いを表現できる臼田さんや仲間の方は素晴らしいですね!! 限られた時間の中からはご自分の生き方・音楽への思いなどがとても強く伝わってきました。 私も今だに進む方向・音楽との関わりなど迷う事ばかりです。 臼田さんの音楽と生きる決断を貫く「強さ」と同時に人を包み込む「柔らかさ」とのハーモニーが、印象に残りました。 与野に在住とか。 ここ川口とは近いですので、ぜひチャンスがありましたらライブにも伺いたいと思っております。

[C164] Obrigado!

ピアノ弾き様、嬉しいお言葉、ありがとうございます!
ブログのほうも拝見いたしました。こちらも嬉しい感想を載せていただき、ありがとうございます。
さきほど、夕飯時に家族と話していて、この催しがもう二年早かったら、このような好評を皆さんからいただくことはなかったのではないか、と僕は言ったのですが、ものごとには機が熟す、ということはあるなとあらためて思ったしだいです。まさに、機は熟してきたようです。さらに精進努力して、より良い演奏ができるようになりたいと思います。そして、またリリアからお呼びがかかりますよう。
ご都合がつきましたら、またライブにおでかけください。
  • 2011-08-30 20:40
  • 臼田道成
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