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僕のコパカバーナ / 2008年正月

roda


新年三が日。正月だけは日本のほうが、のんびりしている。
ブラジルでは、正月のお祝いは、コパカバーナの大花火大会(新年に入った瞬間から20分間ほど、海上に無数の巨大花火が炸裂する)に代表されるように、瞬間的に、熱狂的にすませる感じで、あとは休日の元旦を二日酔いでだらーっと過ごして、二日には仕事始め、というのが普通のようだ。が、二日の昨日は水曜日。コパカバーナのバーBipBipビッピ・ビッピでの、仕事始めならぬ、「rodaホーダ始め」であった。ホーダは音楽の「輪」である。「水曜Bipボサノヴァの輪」責任者代行として、その本年最初の輪に欠けることは許されない。

時節がらか、観光で来ている外国人の参加が多かった。いつものカリオカ歌姫衆、不思議自作パーカッションのマリオおじさん、フランス人(ギタリストとサキソフォニスト)にイタリア人(ギタリスト)、それに日本人の僕。なかなか国際色豊かであった。しかし外国人の彼らはもう、自分のできること、彼(か)の地で一生懸命覚えて来たことをブラジルで披露したくてしかたがないから、おれが、おれが、となって、当然ホーダは混乱する。
BipBipのホーダは、音楽愛好家の自然的集いだから、自分勝手な人が入って来たからといってむやみに「はい、君、出て行きなさい」とかいうわけにはいかない。収拾がつかないまま、みんな黙って我慢するというようなこともある。開けっぴろげなブラジル人でも、こういうときは案外、我慢強く耐えているものである。
昨日のホーダがそうであった。
「ちょいと歌わせてくれ」とか言いながら、妙に文学的顔立ちのおっさんフランス人が、ほぼ「がなり」立てながらバラード調の弾き語りを連発(バラード調の曲は往々にしてひとりの世界にハマるので、他のみなは黙って聴かされるはめになる)。歌の合間に、なにやら詩の朗読なんぞも入れて、もうすっかり自分の世界に浸り切っていた。かと思えば、サーファーっぽい風情のイタリア人青年が、「見て見て、すごいでしょ」という感じで、たぶんものすごく練習してきたのであろう、器用な指さばきで、誰も歌でついてゆけないようなスピードで弾きまくる。つまり、これもみんな黙って聴かされる。
ホーダは、「輪」なんだから、誰かが主役になってはいけない。
みんなでともに弾き合い、歌い合わなければ、ホーダではない。


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臼田の向かいにいるのは凄腕バンドリン奏者Henri Lentino

さて、こういうとき、ホーダを救うには、ちょっと意地悪に、政治的になる必要がある。僕はなにせ責任者代行なので、その意地悪役をよく買って出る。例えば、その文学顔フランス人や、サーファーイタリア人が一曲弾き終わるか終わらぬかのうちに、何も言わずに、みんなが歌いたい曲のイントロを弾き始めてしまう。つまり強引に彼らの世界を終わらせてしまう。外国人ボサノヴァ好きのレパートリーは、ブラジル人のそれとけっこうズレがあるから、彼らの知らない曲が始まってしまって、もうついてこられない。頑張ってソロなんかぺんぺん弾こうとしても合唱のボリュームにうもれて、誰の耳にも届かない(Bipにはアンプなんてものはない。完全「生」)。かわいそうだが、ホーダを救わねばならん。ごめんよ。それで、そのまま休まずメドレーで2曲くらいやってしまう。その間、欧州組は次第になんだか元気がなくなる。みんな僕の伴奏で楽しそうに嬉しそうに歌っている。カリオカ歌姫衆も、その他の客もだんだん調子づいてきて、あれだこれだと、ほうぼうからリクエストが始まる。
これがつまりホーダ。そしてどんどん来るリクエストに応えられるギタリストは、僕しかいない(意外なことだが、リオはボサノヴァのスペシャリストに乏しい)。とにかく、男も女もみんなが歌えるキーで、みんなが気持ちよく歌えるテンポでみんなが愛する曲を、はてしなく伴奏して進ぜる。もちろん僕も一緒に歌うが、Bipでの僕の役目はなんといっても伴奏ギタリスト。あまりにも、伴奏役に徹して来たので、突然「ミチナーリ、なんか好きなものやってくれ!」とか言われると、あれ、なにも浮かばないな、ということになる。まさにマシン。


andre
リオの数少ないボサノヴァ人の一人、André Gonçalvesと

マシンのように、9時から夜中の1時まで、汗だくで弾き続け、閉店後も有志数人でそのまま海岸へ場所を移してホーダ続行。ビールとカシャーサ(焼酎)が入っていたから、最後の方はなにを弾いていたものか思い出せないが、たしか朝の5時過ぎまでやっていたと思う。以前は、Bip閉店後の海岸ホーダは珍しくなかったが、ここのところ、みな元気が無くご無沙汰していたのだった。
海風に吹かれながら、おだやかな波と月を眺めながら、仲間と音楽三昧。いいものだな、とあらためて思った。そして、つまりこれが僕のコパカバーナ、なんだな。
ボサノヴァの生誕地。ビールと交友の、開かれた海辺。世界のボヘミアンの解放区。そういえば、最後まで、サーファーイタリア人もいたなあ。それに、いつの間にか、文学顔フランス人も海岸ホーダに紛れ込んでたな。みんなブラジル音楽がほんとに好きなんだ。いいやつらだ。さっきはごめんよ。

かくして、ホーダ始めもすませ、あとは仕事始めを待つのみ。明日からいよいよ歌唱録音後半戦に入るとするか。昨日今日の練習を見る限り、歌唱は一ヶ月のインターバルの間にかえって向上している気がした。苦手音域の調律が以前より安定してきている。なんだ、これまでの8曲も録り直しか?いやいや、欲張ってはいけない。まずは残り7曲を終わらせること。
さて、本年最初の日誌だ。声も高らかに行こう。
「アルゴ号点検異状無し!出発用意!」


roda_de_samba


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